発散と収束のあいだ ~ダイコンスクラム~

働き方改革?生産性向上?そんなことよりまず全員が幸せに働ける世界にしよう。「チーム」「信念」「感情」この3つの大切さを日本中に広めたい。思考と感情をダンプし、自分の輪郭を明らかにする。心理的安全性を高める哲学とか解説ポエムとか、アジャイルなマインドとか

「タスクのはなし」マルチかシングルか

作業の進め方として、ざっくり「マルチタスク=複数の作業を同時並行で進める」「シングルタスク=ひとつの作業を終えてから次の作業に進む」というのがあります。

 

 

マルチタスクの方が効率的?

一見すると、複数の作業を同時にこなすマルチタスクの方が効率的に思えます。果たして本当にそうでしょうか。

複数の作業を同時に進めるために開発されたロボットであれば、マルチタスクの方が効率的でしょう。麺をお湯に入れる工程と、お湯の中の麺をほぐす工程と、お湯から麺を上げて湯切りする工程を、3本のアームで同時にこなせばいいのですから。例は適当です。

では、人間にも同じように、同時並行作業は可能でしょうか。

 

人間の頭と心と体

答えは否、だと思っています。マルチタスクはやめよう的なことを言う人も、増えてきています。

人間の脳は1つしかありません。目は2つありますが、焦点は1箇所にしか合いません。耳は2つありますが、2人の話を同時に理解することは難しいでしょう。人間の構造的にも、マルチタスク向けの作りにはなっていないはずです。

「でもマルチタスクやってる人いますよね?」という人もいるとは思います。確かにマクロで見ると同時に作業しているように見えますが、とある一瞬に着目すると、絶対に一つの作業に集中しているはずです。

A作業の1手順を終えたらB作業に移って、B作業のきり良いところでA作業の続きに戻って、というように、高速に複数の作業を切り替えることで、“あたかも同時に作業しているように見せかけているだけ”と言えます。

人間の脳には合わない高度な作業のこなし方をしていると言っていいと思います。

 

ちなみにコンピュータも同じで、一つのCPUを持つ一台のコンピュータ上で、複数のソフトウェアを同時に動かしている様に見えますが、これは“高速に1つのソフトウェアを動かす処理を切り替えながら、あたかも同時に動いているように見せかけているだけ”というのが実態です。(今はマルチコアマルチスレッド、複数のCPUを使って本当に同時に動かすことも当たり前になりましたが。)

 

この“あたかも同時に作業しているように見せかける”タスクのこなし方をここから先、便宜上「疑似マルチタスク」と呼ばせてもらいます。

 

マルチタスクとシングルタスクのメタファー

疑似マルチタスクと、シングルタスクのどちらが効率的か?という疑問について考えるために、「机で作業する」比喩について考えます。

 

はじまりはじまり

目の前には小さな勉強机があります。

そこに、“疑似マルチタスクさん”と、“シングルタスクさん”の2人がやってきました。

引き出しの中には、ノート、鉛筆と消しゴム、算数の教科書、折り紙、折り紙の本、が入っています。

これからお二人には、算数の宿題と、2羽の折り鶴づくりを終わらせてもらいます。

 

疑似マルチタスクさんの場合

疑似マルチタスクさんは同時並行作業が常なので、まず引き出しの中身を全て机の上に出しました。机の上はギュウギュウ、置き場を確保するのも一苦労です。

でも作業の全体像も見たいし、キリの良いところで作業も切り替えたいし、このまま作業を進めます。

まず、算数の宿題に取り掛かります。机は狭いですが、順調に問題を説いていきます。なんとラッキーなことに、図形の問題の最後に、「キレイに折り紙を折る方法」というコラムが書いてあります。宿題の途中ですが、休憩も兼ねて、折り鶴を折ることにしました。

まずは、作業場所の確保から。狭い机の上を、教科書を机の端においやり、折り紙を手元に持ってきます。折り紙の本を広げるのも、忘れずに。

折り鶴2羽をどう折ろうかと考えます。ここでも疑似マルチタスクさん、「2羽を同時に折り進めた方が、同じ手順をまとめて折れるから効率的だ!」と考え、2羽を同時に折り進めることにしました。

ただでさえ狭い机の上で、2枚の折り紙、折り紙の本、取り掛かり中の算数の教科書、ノート、鉛筆と消しゴムが広がっています。ギュウギュウです。

狭い机の上で2羽の折り鶴を順調に折り進めます。でも、視界に入る算数の教科書が、「そろそろ宿題も進めた方がいいんじゃない?」と囁いてきます。

疑似マルチタスクさんは折り鶴をキリの良い所まで進めて、算数の宿題に戻ることにしました。

(中略)

疑似マルチタスクさんが算数と折り鶴を行ったり来たりしながら宿題を終え、折り鶴2羽を完成させた頃には、机も散らかって、ひどく疲れてしまいました。

 

シングルタスクさんの場合

シングルタスクさんは同時に複数の作業なんて出来ないと思っているので、まずは算数の宿題に取り掛かると決めました。ノート、鉛筆と消しゴム、算数の教科書を机の上に広げ、宿題に取り掛かりました。

問題を解いていくと、「キレイに折り紙を折る方法」というコラムを見つけました。後で折り鶴を折る際に役立つと思い、折り紙の本を取り出し、折り鶴のページに「算数の教科書P.45にコラムがある」とメモを残し、折り紙の本を引き出しにもう一度しまいました。

少し時間がかかって、算数の宿題が終わりました。ノート、鉛筆と消しゴム、算数の教科書を引き出しに片付け、折り紙の本と折り紙を机の上に取り出します。次は、折り鶴づくりに取り掛かります。

折り鶴2羽をどう折ろうかと考えます。ここでもシングルタスクさん、「1羽を折り終えてから次の1羽を折ろう。机も小さくて作業場所が取りづらいし、1羽折ってしまえば、2羽目は慣れで早く終わるかもしれない」と考え、1羽ずつ折り進めることにしました。また、算数の教科書に載っていたコラムのメモも見つけ、教科書のコラムを読み、教科書を引き出しに片付けた上で、折り鶴づくりに臨みました。

狭いながらも折り鶴づくりに集中できる環境で、直前に読んだコラムにしたがって、着実に1羽目を折り終えます。2羽目を折る際はシングルタスクさんの読み通り、1羽目の慣れもあって、1羽目以上に早く折り終えることができました。

算数の宿題を終えた後に、折り鶴2羽を折り終えたシングルタスクさんは、やり切った爽快感でいっぱいでした。

 

メタファーから見えること

机が、脳内の作業スペースです。疑似マルチタスクさんとシングルタスクさんのどちらがより「効果的」にタスクをこなせていると感じるでしょうか。個人的な意見かもしれませんが、シングルタスクさんだと感じます。例えが大袈裟すぎてちょっと卑怯、伝わらないかもしれませんが……。

疑似マルチタスクの脳内では、比喩の様に作業スペースがギュウギュウになったり、雑念に邪魔されたり、切り替える手間が発生したりしていると、直感的には確信しています。一見すると“効率的”なマルチタスクよりも、シングルタスクの方が“効果的”に仕事が進むと感じています。

 

おわりに

ちょっと大作になってしまいました。マルチタスクさんとシングルタスクさん、あなたはどちらのタイプでしょうか。もちろん、思考のクセや向き不向きもあると思いますが、生きていく上で楽なのは、出来るだけシングルタスクでこなすように行動することだと思います。シングルタスクでこなすときに大切になるのは、優先順位です。優先度、ではなく、優先順位、です。この辺りの話は次回以降に譲ることにして、マルチタスクとシングルタスクの話は終わろうと思います。ここまで長々と、お付き合いありがとうございました。

おわり。

 

(あと、実はこの記事、一部マルチタスクで書いていました。なので公開直後、誤字脱字が酷かったことは内緒です。)

 

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